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リーダーシップ構造論:リーダーシップ発現のファクターと開発の施策

キーノートスピーカー
波頭亮(経済評論家)
ディスカッション
團紀彦、南場智子、西川伸一、岸本周平、櫻井敬子、國信重幸

(3)第Ⅲ期(1980年代~)

そして、第Ⅲ期に入ります。こんなにネチネチやっていてもわからないじゃないか。もっと実際に使えるリーダーシップ論をやろう、ということになります。 どういうリーダーが大事なのか、そういうリーダーはどうやったら育つのか、メカニズムはもういいから強いリーダーが欲しいというニーズに応えようというふうにフェーズが変わったのが、第Ⅲ期です。

それを主導したのが「変革型リーダーシップ論」です。変革を実現するためにフォロワーをリードするリーダーに求められる資質と行動の探求をしましょうということです。ここでのリーダーとマネジャーの区別は、一つのイノベーションになりました。あとでまた説明しますが、第Ⅱ期でいろいろやっていた研究は、リーダーの資質というより、優秀なマネジャーのテクニックやスキルを探る研究が大半でした。つまり、どうすればチームがよく働くかということであって、先ほど言った条件即応理論や状況対応理論というものはマネジメントのスキルであり、もっと言うと、マネジメントのシステムでした。

優秀なマネジャーと優秀なリーダーというものはやっぱり違うものだろう、ということです。どうやったら社会保険庁をひっくり返せるのかという話が先ほどありましたが、イナーシャー[inertia、慣性]を突き破って変革を実現するときに、財務省の官僚だろうがなんだろうが、マネジャーがいかに優秀でも、彼についていくのかどうかといえばついていかないだろう。物を変革するときに彼についていくかどうかという観点で、リーダーとマネジャーは区別される。この点は、リーダーシップ研究の非常に大きい契機になりました。

その原形が、ハウスとシャーミアによる「精神的報酬理論」です。それまでは、フォロワーあるいはワーカーの報酬といえば、ほとんどが金銭的報酬、強いて言えば名誉(ポジション)でした。けれども、ここで言っている精神的報酬は、リーダーに認められることです。この人に認められたい、この人と仲良くなりたいとフォロワーが思うかどうか。そういう報酬こそが、リーダーとマネジャーを分けるものだということです。

また、特に大きいのが、コッターによるリーダーシップとマネジメントの区別・整理です。コッターは、明快にリーダーシップとマネジメントを区分けした、現代のリーダーシップ論の元祖 です。私が今説明しているリーダーシップとマネジメントの区分けも、コッターの説に基づいております。「説」というより、これがいまは主流になっています。皆さんが日頃使うリーダーシップと、ここで言うリーダーシップはやや違いますけれども、マネジメントとリーダーシップを分けることによって新しい地平が開けたことになります。

主流の考え方として、次に「リーダーシップ開発論」があります。では、単なるマネジャーではない優秀なリーダーというのはどうやったら開発できるのか、つくれるのか、というと、ほとんどの優秀なリーダーが共通して持っているのが「一皮むける経験」です。 新規事業をつくった、3分の1にも及ぶような人材のリストラを先頭に立ってやった、つらくて大変なことをやった、という一皮むける経験です。彼らは一皮むける経験をしたと言うし、自分もそれに基づいてリーダーとして成長したような気がするという自覚の面についても言うので、とりあえず一皮むける経験をすること、その経験から学ぶ能力こそがリーダーの資質だ、というのがマッコールの理論です。

主流の考え方として、「フォロワーシップ論」もありますが、これは飛ばします。