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リーダーシップ構造論:リーダーシップ発現のファクターと開発の施策

キーノートスピーカー
波頭亮(経済評論家)
ディスカッション
團紀彦、南場智子、西川伸一、岸本周平、櫻井敬子、國信重幸

(4)従来のリーダーシップ論の課題

これに対して、いままでのリーダーシップ論だけでは不十分ではないかと思ったのが、私の問題意識です。それぞれの人が、特に第Ⅱ期ではいろいろなことを言っています。それぞれみんな、全否定されているわけではありません。いまだに大手を振って歩いているのが第Ⅱ期のいろいろなリーダーシップ論ですが、全部あまりにもスペシフィックすぎるというか、断片的すぎる。

これまでの従来の研究の問題点は、第一に、ファクターが網羅性を著しく欠いていることです。誰のリーダーシップ論によって立つかによって、あまりにも視点が一部分に限定されすぎる。その視点はリーダーの資質、属人的な形質、リーダーとフォロワーの交流の内容、そして、どういう仕事に携わるか、このことを指摘している経験もありますが、この三つのファクターを総括的にカバーしているリーダーシップ論がないというのが一点です。

二つ目が、この網羅性の欠如とも関係するんですが、リーダーとフォロワーの間の関係性としてリーダーシップを捉えていることです。これは心理学からの業績が大きかったこともあります。企業としてリーダーシップを捉える場合には、組織集団を動かす方法論として捉えなければ意味がないのに、リーダーとフォロワーの間の一対一の関係性の形成に着目した研究がほとんどで、組織集団を動かす方法論、つまりマクロの観点が欠如しているということです。

経済学で言えば、どうやって需給のバランスが決まるのかとか、需給カーブによってプライスが決まるとかということがありますが、ミクロの研究はそうやってできていても、金利が上がったら総需要がどうなるのかとか、人口と経済成長率(GDP)の関係はどうなるのかということに相当する、マクロの観点が欠けているということです。ミクロはミクロで極めて大事な分析のアプローチですが、マクロの観点がないと企業の経営のツールとして活用しづらいというのが、私が考える二つ目の視点です。

三つ目、これも二つ目の延長線上にありますが、リーダーシップとマネジメントの区別が曖昧で、集団を効率的に動かすためのマネジャーとしての管理技術の研究になっていること。先ほども申し上げましたが、そういうものが多い。

これを乗り越えて、企業の経営者に使っていただけるリーダーシップ論を研究してみようと思ったのが私の動機です。長引いてしまいましたが、ここまでいったらあとは一直線で行けると思います。