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日本の国家統治に欠けているもの

キーノートスピーカー
加藤秀樹(構想日本代表・東京財団理事長・内閣府行政刷新会議議員兼事務局長)
ディスカッション
波頭亮、團紀彦、西川伸一、茂木健一郎、山崎元、上杉隆、和田秀樹

キーノートスピーチ:日本の国家統治に欠けているもの

加藤 事業仕分けについて、最近は与党内からも「自分で決めた予算を自分で否定するのか」「1時間でこんな議論を出すのは乱暴だ」という声がある。これらは事業仕分けが何かを理解していない議論だ。事業仕分けは政策議論の場でも予算編成の場でもない。目標に対してどう予算が使われ、どう成果があった、主に事実関係のチェックをしているので、1時間で充分結論は出る。

また、公開することについて「政治的なパフォーマンス」との批判もあるが、事業仕分けを成功させる必須条件は「現場」と「公開」だ。たとえば道徳教育には数十億円の予算が付くが、そのうちの6億円はある教材の製作費となっていた。しかし現場の先生たちに聞くと、まったく使われないケースも多い。政策目的と実際のお金の使われ方がずいぶん異なるケースは多々あるが、霞ヶ関の役人は知らなかった。そして現場で集めた事実を外部の目が入るように公開し、逃げ隠れできないようにして議論するのが事業仕分けだ。

加藤秀樹氏

ある意味乱暴な仕組みだが、予算の使途のチェックは国家統治の基本だ。本来チェック機能を果たすべき行政評価局や会計検査院、国会の決算委員会が機能していないことが、本質的な問題なのだ。

同じく国家統治の基本に関することであるにもかかわらず、日本にはないものに、政党に関するルールがある。政党は国家統治を担う団体であり、会社や公益法人などと比べても最もパブリックな存在である。会社の上場制度でわかるように、パブリックな度合いが大きい団体ほど影響力も大きくなるので、その団体のガバナンスを厳格にしなければならない。しかし日本には政党の運営に関するルールがない。政党助成法、政治資金規正法、公職選挙法はいずれもお金や選挙に関する法律で、政党のガバナンスの法律ではない。その結果、政権与党の党則により中途半端な時期に代表選挙が行われて首相が交代したり、無数の政党支部が作られてお金の流れが不透明になる。政党法を作り政党にガバナンス機能を働かせないと、日本の政治の基本的レベルが上がらない。