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空間に対する新たな欲求

キーノートスピーカー
團紀彦(建築家)
ディスカッション
波頭亮、島田雅彦、神保哲生、西川伸一、茂木健一郎、山崎元

ディスカッション

波頭 韓国では今も女性は立膝で座ります。

團 韓国の歴史ドラマでもそうですね。

波頭 團さんの話を聞いて、なるほどと思ったのは、正座を強要したのが家光の時代だったことです。

家光の時代のように、政府が内側に対して制約を作る、つまり自由とは逆方向の国体になったとき、やはり国民は精神的にも現実的にも貧しくなっていくのでしょう。

ルールにはまらないものはダメになればなるほど、自由と伸びやかさが奪われます。本来人間の認知、解釈、意味づけの仕方はとても混沌としたものです。それなのにフォーマットに収まらないものは価値がないとしてしまうと、人々の発想は貧困になり、ひいては非常に危ない社会になっていきます。

團 とはいえ、多くのルールを作った家光がいなかったら、江戸時代は300年も続かなかったでしょうね。日光東照宮の建設のため、大名に多くの拠出をさせたのも家光です。そうやって有力な大名にも大金を出させたため、結果中央集権が強化されました。

波頭 その東照宮の象徴が、三猿(見ざる、言わざる、聞かざる)とは強烈な皮肉です。

山崎 江戸時代は、見ようによっては、幕府が作った制約やルールに対する適合を競うという、自発的服従競争みたいな社会だったのかもしれません。

島田 江戸時代初期のキリシタン弾圧を見ると、いちばん卑劣だったのはやはり家光の時代でした。この時代に、火あぶりの刑を逆さ吊りの刑に変えています。火あぶりは、殉教を演出させますが、逆さ吊りは非常に無様なのでまったく殉教を想起させません。

團 やはり家光時代に、上に楯突くと損だという雰囲気が醸成されたのではないでしょうか。
今の時代も、若い人たちを見ていると、やはり自由な振る舞いをすると損だという雰囲気が少なからずあるように見えます。