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日本のこれから

キーノートスピーカー
黒川清(日本医療政策機構代表理事)
ディスカッション
波頭亮、島田雅彦、西川伸一、茂木健一郎、山崎元、上杉隆

上杉 教育だけでなく、メディアも内向きだと思います。日本では外国人キャスターを見かけないし、新聞記者にも外国人はほとんどいない。世界的には、メディアに他国の人材を入れることで多様性を生む動きにあるのに、日本だけは違う。

島田 敗戦後の復興期、知識人のあいだでルネサンス研究がなされ、自由にものを言い、チャレンジングな研究がなされる環境をつくろうとしましたが、上の顔色をうかがう儒教的な雰囲気がすぐに復活してしまいました。

波頭 そうした事象を含めて、旧体制、既得構造を改革しないできたことによって、日本は二十年間GDPが上がっていない。日本と同じように成熟していて人口が伸びていないEU各国ではGDPは持続的に上昇しています。

黒川 平成の三十年間でドイツは二倍、アメリカは三倍になっていますからね。日本が経済成長できないのは、大学入試の偏差値の高い忖度で出世した人が要職に就いてしまっているからです。

そもそも大学に入るときに、文系と理系に分けるのは日本くらいですよ。アメリカのトップの大学生は、いずれは医学や物理を専攻していても、プラトンやアリストテレス、マキャベリなどの古典を読まなければいけない仕組みになっています。しかも、図書館などで読み込んで中身を咀嚼したうえで、講義では議論が行なわれるんです。

波頭 アメリカの真面目な大学生の平均読書量は、四年間で一〇〇〇冊。一方、日本の大学生は平均一〇〇冊だそうです。

西川 一〇〇冊読んでいたら、まだましなほうじゃないでしょうか。

黒川 イギリスのオックスフォードやケンブリッジ大学では、毎週レポートの課題が与えられ、そのために読まなければいけない本が一〇冊くらい指定されます。そして自分はどういうフレームで書くかについて、先生と徹底的に議論する。毎週ですよ。イギリスに留学した人に聞くと、「あんなに頭を使ったことはない」と言っていました。アメリカもイギリスも、トップ大学の学生は家で大量の本を読み、講義では、蓄えたインプットを生かす対話をしている。そういう人たちと日本の学生は競争していかなければならないのに、いまの教育のままではいけない、と危機感をもっています。