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リーダーシップ構造論:リーダーシップ発現のファクターと開発の施策

キーノートスピーカー
波頭亮(経済評論家)
ディスカッション
團紀彦、南場智子、西川伸一、岸本周平、櫻井敬子、國信重幸

(2)第Ⅱ期(1950~1970年代)

1940年代に第二次大戦も終わって、20世紀後半からはいろいろなものが一皮むけたフェーズになって、リーダーシップ研究も少しトーンが変わりました。要するに、背が高いだ低いだ、二枚目だ二枚目じゃないだ、頭がいいだ悪いだというアプローチでは駄目なのだったら、属人的な形質や資質ではなくて、リーダーがどういう行動をとったら、フォロワーは「はい、はい」と黙ってすぐについてくるのかという、「リーダーシップ行動論」のようなアプローチがあります。あるいは、リーダーとフォロワーの間の交流を見る。「交流」というのは心理学の言葉で、コミュニケーションです。どういうコミュニケーションが成立したときにフォロワーはついてくるのか、という「リーダーシップ交流論」です。あるいは、リーダーがフォロワーをどう見ているのか。要するに、敬意を持っているのか、見下しているのか。場合によっては、フォロワーがリーダーをどう見なしているときにリーダーシップが発生するのか、という「リーダーシップ認知論」もあります。

つまり、リーダーの属人的な形質から、リーダーの行動や、リーダーとフォロワーとの間のトランザクションのほうに目を向けて研究したのが、1950~1970年代の第Ⅱ期です。第Ⅰ期は、「これさえあれば」という一発回答、打出の小槌的な宝の発見には失敗しましたが、第Ⅱ期は、スペシフィックな成果はいろいろな形で出ています。あまり詳しくは言いませんが、主な研究成果としては、例えばPM理論があります。PMとはパフォーマンスとメンテナンスです。どういうふうに課題をブレークダウンして、プロセス管理を行なうかというパフォーマンスに対するマネジメント・行動と、「元気?」と声を掛けてあげるような、心に対するケアのメンテナンス、その両方があるときにリーダーシップは発生するというものです。

また、「フィードラーによる条件即応理論」というと大仰ですけれども、どれぐらい達成したらどれぐらいボーナスをあげるよというような条件によって人の動き方というものは変わるから、条件の設定のうまい人がリーダーシップを獲得することができるというものです。

ハーシー/ブランチャーの「状況対応理論」は、フォロワーの能力段階によって対応を変えるといいですよ、というものです。右も左もわからない人は横についていて教えてあげるといい、ちょっとできるようになったらやらせてごらん、あるいはもう本当に一人前みたいな人に対して、横でああだこうだ言うんじゃなくて、結果責任でやらせてあげるという対応をすると、喜んでリーダーとして認めてくれるというものです。

ホランダーによる「信頼蓄積論」は比較的、いまのリーダーシップ論の原形を成すような考え方です。日頃一緒に動くことをベースにして、リーダーに対する信頼があれば、どんなことにでもついていく。当たり前のことを言っているようですが、あとの話との絡みでも大事な点です。それまでのやりとりの中で信頼を持っていれば、どんなことにでもついていくという信頼理論です。

ロードによる「リーダープロトタイプ理論」は、こういう人が理想のリーダーだというリーダーイメージがみんなの心の中にあります。業界ごと、民族ごとにいろいろ違いますけれども、そのプロトタイプにリーダーが自分で合わせる場合、あるいは、たまたま合った場合にフォロワーがついてくるというものです。

このようにしてリーダーシップが発生するという、さまざまなスペシフィックな成果が出てきました。成果が出ていると言っても、いま聞いておわかりになるように、言ってみれば当たり前の話ばかりで、これでリーダーシップ論の視野が大きく開けるということにはまだならなかった。なぜ同じ集団のパフォーマンスがリーダーによってこうも違うのかという問題意識はあり、第Ⅱ期にいろいろな理論や研究が成立したけれども、まだ全然広がらなかった。