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リーダーシップ構造論:リーダーシップ発現のファクターと開発の施策

キーノートスピーカー
波頭亮(経済評論家)
ディスカッション
團紀彦、南場智子、西川伸一、岸本周平、櫻井敬子、國信重幸

(3)リーダーシップ構造論の特徴

この組織環境条件は企図的に設計可能であるということが、非常に大きいポイントです。いままで、リーダーシップを開発したいあるいはリーダーを育てたいというときは、企業経営の中ではずっと「リーダーの属人的資質」一本で考えていたきらいがあります。要するに、リーダーの資質を持っている人を探し出すとか、リーダーとして必要な能力を身につけさせるために勉強させるとか経験させるなど、これ一本でやってきました。

この一本でいくらやっても、組ませた相手が悪かったら、例えばカルロス・ゴーンがトヨタに行って力を発揮できたかというと、全然そうじゃないでしょう。これはケミストリーの問題です。あるいは、同じ集団でも、どういう仕事をやらせるかというタスク特性あるいはジョブデザインによって、リーダーがぐいぐい引っ張っていける状況になるかならないかというのは圧倒的に違います。組織制度やルールも、うまく設計するのとしないのとで、リーダーシップの発生は大きく違います。これが一つの大きなメッセージです。

私のリーダーシップ構造論の特徴は、企図的に設計可能であるということです。いままで、優秀なリーダーあるいは大きなリーダーシップを持った人材の育成と活用は、リーダーの属人的なテーマであると思っていましたが、実はマネジメントの一環だったのです。つまり、リーダーシップとマネジメントというのは違う方法論であるという説明で来ましたが、企図的に設計可能なものによってコンプリートすることによって、リーダーシップあるいはリーダーの活用というものをマネジメントの一つのツールにできたことが、非常に大きい成果だと思っています。

特徴を補足しますと、まず、「フォロワーの自発性と主体性」があります。いままでリーダーの研究というのは、特に第Ⅱ期、第Ⅲ期もリーダー自身に注目してきましたが、フォロワーがリーダーのリーダーシップコアを承認することによって発生するという意味で、リーダーシップ発生の主体、能動態をフォロワーに置いている点が特徴です。これは、ケミストリーに反映されている話です。

次に、「環境条件の重視」です。どうすればクリエイティビティースペースが広がるのかということです。タスク特性あるいは組織特性の話も、クリエイティビティースペースから出てきたファクターです。

このように構造的に理解することによって、違う二つの方法論と思われていたリーダーシップ方法論とマネジメント方法論をリンクさせることが可能になりました。